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解雇回避努力義務と希望退職者の募集 |不当解雇.COM

解雇回避努力義務と希望退職者の募集

事例

私は,シンガポールに本店を置く銀行に勤務して参りました。銀行は,日本における営業所として,東京支店および大阪支店を置いており,私は大阪支店で外国為替等の業務を担当しています。ところが,銀行は,先般,大阪支店従業員に対して,大阪支店を閉鎖する旨を発表し,東京支店への転勤はないこと,大阪支店職員全員に対して希望退職に応じるよう要請し,希望退職を募る条件として,自己都合退職ではない退職一時金を支払うこと,追加退職金を支給すること,転職斡旋サービスを提供すること等を内容とした提案を行いました。なお,私は,数年前までは東京支店に勤務しており,東京支店の業務にも十分精通しています。また,東京支店には多少の欠員が出ていると,東京支店勤務の元同僚から聞きました。そこで,私は,すぐに転職先も見つかりませんし,東京支店への配転を求めて会社と交渉して参りました。しかし,結局会社は,退職条件を一定程度上げるに留め,私が希望退職に応じなかったため,整理解雇しました。整理解雇の実施にあたっては希望退職者の募集をして解雇を回避しなければならないのではないでしょうか?

不当解雇

回答

整理解雇は,業績不振・業務縮小など経営者側の事情に基づく事由によるものであり,労働者に責任のない事由により労働者を失職させることになりますので,出来うる限り整理解雇は避けるようにすべきと言えます。
従って,整理解雇に際し,希望退職者の募集,労働時間の短縮,一時帰休,配転等なしうる解雇回避努力の検討を行っていないような場合には,裁判例では,解雇回避義務が尽くされたとは認められない傾向にあります。
ただ,解雇回避努力義務は,当該具体的事情のもとにおいて,状況に応じて解雇回避の努力をなす義務ですので,企業の経営状況,企業規模,従業員構成などを踏まえて個別具体的に判断されます。それゆえ,解雇回避努力義務として,整理解雇前に希望退職者の募集を必ず行わなければならないわけではなく,また,希望退職者の募集の範囲も必ずしも全社的に行わなければならないものではありません。
ご相談の場合,東京支店で従業員に欠員があり,かつ,ご相談者は東京支店の業務にも精通されているとのことですので,解雇回避努力義務として,東京支店を含めた希望退職募集が実施されていないことは疑問です。また,その他人員削減の必要性,手続の相当性についての検討の余地があります。



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解説

1 希望退職者の募集は不可欠か

整理解雇に際し,希望退職者の募集,労働時間の短縮,一時帰休,配転等なしうる解雇回避努力の検討を行っていないような場合には,裁判例では,解雇回避義務が尽くされたとは認められない傾向にあります。
ただ,解雇回避努力義務は,当該具体的事情のもとにおいて,状況に応じて解雇回避の努力をなす義務ですので,企業の経営状況,企業規模,従業員構成などを踏まえて個別具体的に判断されます。それゆえ,解雇回避努力義務として,整理解雇前に希望退職者の募集を必ず行わなければならないわけではなく,また,希望退職者の募集の範囲も必ずしも全社的に行わなければならないものではありません。
シンガポール・デベロップメント銀行(本訴)事件(大阪地方裁判所判決 平成12年6月23日 労働判例786号16頁)では,東京支店と大阪支店の2支店を置いて商業銀行業務を行ってきた外資系銀行が,大阪支店は収支改善の見込みがないため閉鎖を決定し,大阪支店従業員のみを対象に希望退職の募集を行った事案において,「被告の企業規模は,平成11年5月当時,支店長,副支店長2名を含めて21人という比較的小さいもので,しかもその業務には,外国の金融機関という性格から,専門的な知識や高度な能力を必要とする部分があり,誰にでもなし得るような業務の担当者は更に少なかったと認められ,右のように従業員の人数が少ない職場では,従業員の意向を把握することは容易であり,被告においても,その意向を把握のうえ,東京支店の従業員の自然減による減少を予定していたものと窺える。右のように,小規模な人員しかいない職場において希望退職を募ることは,これによって原告らを就労させることができる適当な部署が生じるとは必ずしもいえないうえ,代替不可能な従業員や有能な従業員が退職することになったりして,業務に混乱を生じる可能性を否定できず,希望退職の募集によって,従業員に無用の不安を生じさせることもあるし,希望退職を募る以上通常の退職より有利な条件を付与することになるが,自然減による減少に比べて,費用負担が増加することになる。また,原告らが就労可能な部署が生じたとしても,東京支店への転勤は住居を移転した転勤となり,これに伴い費用が生じるが,原告らはその住居費,帰省費用などの被告負担を主張しており,被告がこれに応じれば,それは被告にとって負担となり,応じない場合には,原告らが転勤に応じるとは限らないから,その場合,希望退職を募ったことは全く無意味となる。これらの不都合を考慮すれば,被告が東京支店において希望退職の募集をしなかったことをもって,不当ということはできない。」と判断しました。
また,ナショナル・ウエストミンスター銀行(第3次仮処分)事件(東京地決平成12.1.21 労判782.23)でも解雇回避措置が基本であるとしつつも,それが困難な場合は経済的補償や再就職支援措置でも相応な配慮をしたと判断しています。

2 希望退職者の募集期間

希望退職期間については,「考慮期間をわずか10日間しか与えられていないなど,性急に過ぎるとの感を否めない」としたもの(ジャレコ事件 東京地決平成7.10.20労判697.89),1次,2次の希望退職期間がいずれも4日間と短く,2次募集締め切り後に予告解雇したことに疑問が呈されたもの(高松重機事件 高松地判平成10.6.2 労判751.63)があります。実務上一般的には,希望退職の募集期間は2~3週間から1ヶ月程度とする例が多いですが,個別的事情により緊急度がどれだけあったかという判断になるものと考えられます。

3 希望退職者の募集の範囲

特定の事業部門ないし事業所を閉鎖する場合において,希望退職者の募集は全社的に行うべきか,それとも閉鎖対象事業所だけでよいのか,も問題となります。
この点は,事業所閉鎖の目的(人件費削減)と従業員間の公平性という利益を衡量して,ケースバイケースに判断されます。前記シンガポール・デベロップメント銀行(本訴)事件では,不採算部門を閉鎖・合理化して競争力を高めるという目的と全社的に希望退職者を募った場合の費用,業務効率,時間等を比較考量し,全社的に行う場合には前者の目的を達し得ないとして,閉鎖事業所の従業員だけを退職にした企業の措置を不当ではないと判断しました。
ただ,実際には,このような判断が成されうるのは限定的であり,事案を詳細に分析する必要があります。

対応方法

1 まずは弁護士に相談!

解雇された又はされそうなあなたが採れる手段は,ケースバイケースですが,直ちに解雇の撤回・復職を求めたり,あなたが解雇されなければもらえたはずの賃金を請求したり,不当解雇による損害賠償を請求したりすること等が挙げられます。
まずは,なるべく早くご相談下さい。相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いものです。
弁護士は,あなたのご事情を伺い,具体的対応策をあなたと一緒に検討し,最善の解決策をアドバイスします。
不当解雇.COMでは,解雇等された方のご相談については,初回30分間を無料で承っております。
あなたのケースでは解雇は有効になるのか否か,具体的な対策として打つべき手は何か,証拠として押さえておくべきものは何か等をアドバイスします。

2 証拠の収集

法的措置をとる場合はもちろん,交渉による解決を目指す場合も,証拠の確保が極めて重要になります。あなたにとって有利な証拠を出来るだけ確保して下さい。

3 会社との交渉

まずは,法的措置を用いず,会社と交渉して,あなたの望む結果(解雇を撤回,復職,未払残業代の支払い,より有利な条件での退職等)が得られるようにします。
会社側の対応は様々ですが,あなたを退職に追い込むために様々な働きかけをする事が多いのが実情です。

4 裁判

会社があなたの要望に応じない場合は,裁判を起こします。具体的には,賃金仮払い仮処分手続,労働審判手続,訴訟手続などがありますが,事案に応じてあなたにもっとも適した手続を選択して,あなたの請求の実現を目指すことになります。

弁護士に依頼した場合

1 弁護士はあなたのパートナーです。

不当解雇され自信を失ったあなたは,家族・友人にも中々相談できず,一人苦しんでいませんか?安心してください。弁護士はあなたの味方となり,親身に話しを聞いて,今後の対応を一緒になって考えます。弁護士はあなたに共感し,あなたと一緒になって戦うパートナーです。

2 継続的な相談・コンサルティング

不当解雇と闘う場合,ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なります。また,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。また,一人で会社と戦うのは不安がつきまとうものです。
弁護士に依頼した場合,初期の段階よりあなたにとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して仕事や生活を送ることができます。

3 あなたに代わって会社に対し請求・交渉をします。

会社側の対応は様々ですが,あなたを退職に追い込むために様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が会社に対し各種の請求を行い,対等な立場で交渉に臨むことは一般的には困難であることが多いといえます。そこで,弁護士は,あなたに代わり,情報収集のお手伝いをしたり,解雇の撤回等を求める通知を出したり,会社と交渉したり致します。弁護士の指導の下で適切な証拠が確保でき,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し交渉することで,あなたにとって有利な結論を,裁判を使わずに勝ち取ることが可能です。

4 あなたに代わって裁判を起こします。

もし,会社があなたの要望に応じない場合は,裁判を起こします。
具体的には,労働審判手続,仮処分手続,訴訟手続などがありますが,事案に応じてあなたにもっとも適した手続を選択して,あなたの請求の早期実現を目指します。
最近では労働審判手続による解決水準が高まっており,かつ,同手続によって2~4か月間で解決を図ることが可能となっています。

費用

こちら

判決事例

シンガポール・デベロップメント銀行(本訴)事件
大阪地方裁判所判決 平成12年6月23日 労働判例786号16頁

ナショナル・ウエストミンスター銀行(第3次仮処分)事件
東京地決平成12.1.21 労判782.23

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