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人員削減の必要性 |不当解雇.COM

人員削減の必要性

事例

私が勤務するY会社は,大阪と東京に本社を置き国内外にグループ事業会社を有する会社です。私は,12年前に当時Y会社が東北地区に唯一有していた建材事業部東北営業所に採用され同営業所の経理・庶務の仕事に携わってきました。最近2年,Y会社全体では黒字を計上していましたが,建材事業部では赤字が続き,同部東北営業所も例外ではありませんでした。建材事業部では諸経費・退職金の削減に努めましたが,Y会社は今年7月に東北営業所の閉鎖を決定しました。東北営業所の業務は東京本社や栃木の関連会社に移管されることになり,同営業所に勤務する私を含む5名の仕事がなくなることになりました。Y会社は,整理解雇の対象となった私と,もう1人の女性従業員について,通勤可能範囲にある関連会社2社に受入れを打診しましたが,各社から労務費の高い従業員の受入れは困難との回答を受けました。さらにY会社は,労働組合を通じて,私達に地域職(勤務地は転居を伴わない範囲の事業所に限定される)から総合職への転換を提案しましたが,私達はこれを拒否し,東北での継続勤務・職場確保を要求しました。すると,9月27日,ついにY会社は私達に対して翌月の10月31日付で解雇する旨の解雇予告通知書を交付しました。なお,Y会社は,同解雇に際して退職金の特別加算(10か月分)及び会社負担での再就職支援等を提案しています。
このように不採算部門を閉鎖して,採算性を向上させるために整理解雇を行うことはできるのでしょうか?整理解雇は,会社の業績がどの程度になればできるのですか?

不当解雇

回答

人員削減の必要性については,当該人員削減の措置(整理解雇)をしなければ企業が倒産してしまうような状況であることを要するという裁判例もあります。しかし,裁判例の多くは,高度の経営上の必要性ないし企業の合理的な運営上の必要性があるという程度で足りるとしています。ご相談の件は,確かに企業全体としては黒字であったのですが,事業部門別に見ると不採算部門が生じていたため,その部門を閉鎖することは,企業の経営判断として不合理なものとは言えません。さらに,部門閉鎖によって余剰人員が生じた場合,人員削減の必要性は認められると言えます。

解説

1 人員削減の必要性

人員削減の必要性とは,企業が有効に整理解雇をなしうるためには,企業の経営状況がどの程度にあることを要するのかに関する判断要素の一つです。この判断は各企業の規模や実状をもとにケースバイケースに判断されますので,一般論として一義的にその程度を定立することは困難です。
この点,人員削減の必要性については,当該人員削減の措置(整理解雇)をしなければ企業が倒産してしまうような状況であることを要するという裁判例もあります。しかし,この様に厳格に人員削減の必要性を求めていた裁判例の当時と現在とでは,産業構造や金融政策の違いなどの相違があることを無視することは出来ません。
今日では,裁判例の多くは,債務超過や赤字累積に示される高度の経営上の困難があるという程度で足りるとしています。つまり,裁判所は,人員削減の必要性に関する経営専門化の判断を実際上は尊重しているとさえ言えるでしょう。
但し,素人目にも明らかに人員削減の必要性が無い場合は,整理解雇は認められません。例えば,整理解雇を決定した後間もなく,大幅な賃上げや,多数の新規採用や,高率の株式配当を行った場合などは,人員削減の必要性は否定されます。

2 企業全体として黒字でも人員削減の必要性が認められるか?

企業全体としてみれば収益があがっている場合に,経営合理化の観点から不採算部門を閉鎖して人員削減をすることは許されるかが問題となります。
この点,鐘淵化学工業(東北営業所A)事件(仙台地決平成14年8月26日 労判837号51頁)では,企業「企業全体として黒字であったとしても事業部門別に見ると不採算部門が生じている場合には,経営の合理化を進めるべく赤字部門について経費削減等の経営改善を図ること自体は」「経営判断として当然の行動というべきである。」「業績の落ち込みは一時的な景気後退による不況というよりも経済構造の変化に伴う不況によるものと考えられることに照らし,これまでの経営合理化をさらに進める必要があったというべきであって」「営業所の廃止を含む経営合理化を行ったことはやむをえないというほかない。そうすると,東北営業所の閉鎖によって余剰人員が生じる結果となるのは避けられないのであるから,」「人員削減の必要性が認められるといわなければならない。」と判断しました。また,東洋印刷事件(東京地判平成14.9.30 労経速1819.25)は,「印刷業は,受注量の減少とDTP化による受注単位の減少という二つの要因により,構造的に業績不振であった。・・・版下作成までの工程を担当していた電算室は,DTP化という印刷業界の大きな変化の影響を受けていたことは明らかであり・・・旧態依然たる被告の電算室部門が,不採算部門であって,対策を立てる必要があることは明らかである」と判示し,不採算部門を廃止することは経営判断として当然であるとしています。このように,収益が上がっている場合でも,不採算部門を閉鎖して人員削減をすることは許容されていると言えます。
さらに,採算性の向上や利益追求という目的による人員削減も必要性があると認められる傾向にあります。ナショナル・ウエストミンスター銀行(2次仮処分)事件(東京地決平成11.1.29 労判782.35)において,競争力強化のために,投資銀行関連業務に重点を置くとの方針のもとに伝統的なトレードファイナンス業務から撤退し,これに伴い撤退部門に所属したアシスタント・マネージャーを解雇した事案について,「更に将来においても経営危機に陥ることが予測されない企業が単に余剰人員を整理して採算性の向上を図るだけであっても,企業経営上の観点からそのことに合理性があると認められるのであれば,余剰人員の削減の経営上の必要性を肯定できる。」と判示しました。同じく,ナショナル・ウエストミンスター銀行(3次仮処分)事件(東京地決平成12.1.21 労判782.23)においては,「リストラクチャリングは限られた人的・物的資源を戦略上重要な事業に集中させ,不採算事業を縮小,廃止し,もって,資本効率の向上,競争力の強化を図ることを目的とするものであり,・・・リストラクチャリングを実施する過程においては,・・・余剰人員の発生が避けられないものであり,この間の労働力の需給関係は必ずしも一致するとは限らないから,企業において余剰人員の削減が俎上に上がることは経営が現に危機的状況に陥っているかどうかにかかわらず,リストラクチャリングの目的からすれば必然ともいえる。」と判示し,採算性の向上を図るためのリストラクチャリングに伴う人員削減も肯定しうるとしています。

3 解雇前後にパート・アルバイト・派遣社員等を採用している場合

解雇の前後にパート・アルバイト・派遣社員等を採用している場合,人員削減の必要性があったと言えるのでしょうか?
余剰人員が存在するとして整理解雇しているにもかかわらず,その前後にアルバイト等の採用をしている場合,一般的には余剰人員が存在したと言えるのか疑問があり,人員削減の必要性が無いと言えます。
ただ,解雇の前後に非正規従業員の採用があったとしても,その採否が当該人員削減の目的との関係で合理性を有する場合は,人員削減の必要性が肯定されることもあります。

  • 社会福祉法人大阪暁明館事件 大阪地決平成7.10.20 労判685-49
  • レブロン事件 静岡地裁浜松支部決定平成10年5月20日 労経速1687.3
  • ナカミチ事件 東京地裁八王子支決平成11.7.23 労判775.71
  • 明治書院事件 東京地決平成12.1.12 労判779.27

対応方法

1 まずは弁護士に相談!

解雇された又はされそうなあなたが採れる手段は,ケースバイケースですが,直ちに解雇の撤回・復職を求めたり,あなたが解雇されなければもらえたはずの賃金を請求したり,不当解雇による損害賠償を請求したりすること等が挙げられます。
まずは,なるべく早くご相談下さい。相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いものです。
弁護士は,あなたのご事情を伺い,具体的対応策をあなたと一緒に検討し,最善の解決策をアドバイスします。
不当解雇.COMでは,解雇等された方のご相談については,初回30分間を無料で承っております。
あなたのケースでは解雇は有効になるのか否か,具体的な対策として打つべき手は何か,証拠として押さえておくべきものは何か等をアドバイスします。

2 証拠の収集

法的措置をとる場合はもちろん,交渉による解決を目指す場合も,証拠の確保が極めて重要になります。あなたにとって有利な証拠を出来るだけ確保して下さい。

3 会社との交渉

まずは,法的措置を用いず,会社と交渉して,あなたの望む結果(解雇を撤回,復職,未払残業代の支払い,より有利な条件での退職等)が得られるようにします。
会社側の対応は様々ですが,あなたを退職に追い込むために様々な働きかけをする事が多いのが実情です。

4 裁判

会社があなたの要望に応じない場合は,裁判を起こします。具体的には,賃金仮払い仮処分手続,労働審判手続,訴訟手続などがありますが,事案に応じてあなたにもっとも適した手続を選択して,あなたの請求の実現を目指すことになります。

弁護士に依頼した場合

1 弁護士はあなたのパートナーです。

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2 継続的な相談・コンサルティング

不当解雇と闘う場合,ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なります。また,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。また,一人で会社と戦うのは不安がつきまとうものです。
弁護士に依頼した場合,初期の段階よりあなたにとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して仕事や生活を送ることができます。

3 あなたに代わって会社に対し請求・交渉をします。

会社側の対応は様々ですが,あなたを退職に追い込むために様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が会社に対し各種の請求を行い,対等な立場で交渉に臨むことは一般的には困難であることが多いといえます。そこで,弁護士は,あなたに代わり,情報収集のお手伝いをしたり,解雇の撤回等を求める通知を出したり,会社と交渉したり致します。弁護士の指導の下で適切な証拠が確保でき,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し交渉することで,あなたにとって有利な結論を,裁判を使わずに勝ち取ることが可能です。

4 あなたに代わって裁判を起こします。

もし,会社があなたの要望に応じない場合は,裁判を起こします。
具体的には,労働審判手続,仮処分手続,訴訟手続などがありますが,事案に応じてあなたにもっとも適した手続を選択して,あなたの請求の早期実現を目指します。
最近では労働審判手続による解決水準が高まっており,かつ,同手続によって2~4か月間で解決を図ることが可能となっています。

費用

こちら

判決事例

鐘淵化学工業(東北営業所A)事件

仙台地決平成14年8月26日 労判837号51頁

東洋印刷事件

東京地判平成14.9.30 労経速1819.25

ナショナル・ウエストミンスター銀行(2次仮処分)事件

東京地決平成11.1.29 労判782.35

社会福祉法人大阪暁明館事件

大阪地決平成7.10.20 労判685-49

レブロン事件

静岡地裁浜松支部決定平成10年5月20日 労経速1687.3

ナカミチ事件

東京地裁八王子支決平成11.7.23 労判775.71

明治書院事件

東京地決平成12.1.12 労判779.27

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