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懲戒解雇への対応方法

事例

私は,先日,会社の上司から呼び出されて,職務懈怠を理由に,懲戒解雇すると告げられました。しかし,会社の言う解雇理由には納得がいきませんし,懲戒解雇を受けた場合,再就職にも大きな支障になります。どのように対応すれば良いでしょうか?

不当解雇

回答

懲戒解雇は,企業秩序の違反に対し,使用者によって課せられる一種の制裁罰として,使用者が有する懲戒権の発動により行われるものです。労働者の債務不履行を理由としてなされる普通解雇と比べ,懲戒解雇は労働者にとって「死刑」ともいえる重要な不利益を与えます。というのも,懲戒解雇となった場合,その事実は労働者の人生につきまとい,再就職の重大な障害等になるからです。ですので可能な限り,懲戒解雇を撤回させるよう努力した方が良いでしょう。

1 まず,弁護士に相談しましょう。

弁護士は,あなたのご事情を伺い,具体的対応策をあなたと一緒に検討し,最善の解決策をアドバイスします。なるべく早くご相談下さい。相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いものです。

2 会社(使用者)に対して,解雇通知書,解雇理由証明書を求めましょう。

この書面を見ることで,解雇されたのか,合意解約なのか,解雇の理由は何か,を把握することができます。把握した内容について,対応を検討することになります。

3 解雇が,法律や就業規則上の手続条項に違反していないかチェックする。

4 退職を前提とした行動をとらず,就労の意思を明らかにする。

例えば,解雇の撤回を求め,就労の意思がある旨を内容証明郵便等の書面で通知します。他方で,退職金の請求,有給休暇の買い取り請求などは,退職を前提とした行動ですので,解雇を争う場合は控えた方がよいでしょう。
これに対し,解雇後に離職票の受領,健康保険証の返却,解雇予告手当や退職金の振り込みを受けたことによって,解雇の効力を争う権利がなくなることはありません。
もっとも,退職金や解雇予告手当が振り込まれてきた場合は,これを返還・供託するか,労働者において預かり保管し,以降発生する賃金の一部に順次充当する旨を内容証明郵便で通知することがよくあります。

5 解雇後の生活を確保

雇用保険の受領(仮給付),再就職活動,健康保険等の対応などを行います

6 会社との交渉

まずは,裁判等の法的措置を使わずに,交渉による解決を目指します。労力やコストを考えれば,交渉による解決が労働者の利益に叶う場合も多くあります。

7 法的措置

会社が交渉に応じない又は労働者の望む解決に歩み寄る見込みがない場合は,法的措置を行います。具体的には,労働審判手続,仮処分手続,訴訟手続がありますが,会社との関係,労働者の望む解決等に沿って,手続を選択します。

 

解説

1 解雇された労働者のとる方法

① 使用者に対して,退職証明を求める。

使用者は,労働者より,退職の事由(解雇理由),使用期間,業務の種類,その事業における地位,賃金について証明書を請求された場合は,遅滞なくこれを交付しなければなりません(労働基準法22条)。この書面を見ることで,解雇されたのか,合意解約なのか,解雇の理由は何か,を把握することができます。解雇理由は具体的に記載しなければならないことになっていますので,もし証明書に「労働者の適格性の欠如・喪失」などと抽象的理由しか書いてなかった場合は,さらに使用者に対して文書で説明を求め,回答させる場合もあります。

② 解雇が,法律や就業規則上の手続条項に違反していないかチェックする。
③ 退職を前提とした行動をとらず,就労の意思を明らかにする。

例えば,解雇の撤回を求め,就労の意思がある旨を内容証明郵便等の書面で通知します。他方で,退職金の請求などは,退職を前提とした行動ですので,解雇を争う場合は控えられます。
これに対し,解雇後に離職票の受領,健康保険証の返却,解雇予告手当や退職金の振り込みを受けたことによって,解雇の効力を争う権利がなくなることはありません。もっとも,退職金や解雇予告手当が振り込まれてきた場合は,これを返還・供託するか,労働者において預かり保管し,以降発生する賃金の一部に順次充当する旨を内容証明郵便で通知することがよくあります。

④ 労働者の解雇後の生活

(1) 雇用保険(仮給付制度)の受領
(2) 使用者から支払われた退職金等の充当
(3) 他社での就労

2 解雇の効力をめぐる紛争の解決方法

①示談交渉・・当事者間での交渉による解決を図る
②労働局,労政事務所等の自治体のあっせんによる解決
③裁判所を利用した解決(労働審判,仮処分,本訴)

3 示談交渉とはどのような解決方法ですか?

示談交渉とは,裁判などを使わずに,文字通り会社と労働者で解決に向けた協議・交渉をすることです。この方法のメリットは,コスト面で裁判費用等がかからず,かつ,早期解決を得られる可能性が高いというところにあります。
デメリットは,あくまでも会社と労働者との間で協議がまとまる見込みがなければ,何ら解決しないという点です。法的手続を利用した場合の強制力もなく,会社と労働者では交渉力に差があるのが通常ですので(つまり,会社の方が「強い立場にある」),場合によっては,会社の意向に沿った大幅な妥協を余儀なくされる場合が多いのが実情です。
但し,弁護士を代理人として立てた場合は,上記交渉力の差が是正され,かつ,法律的な根拠を示しつつ法的措置をとった場合に見込みを突きつけて交渉しますので,デメリットが是正されます。実際にも,弁護士を介した交渉により,法的措置をとった場合と同水準の解決を得られることも多くあります。

4 労働局,労政事務所等の自治体のあっせんによる解決とは?

都道府県労働局長による助言・指導とは,民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局(厚生労働省の地方支分部局であり、全都道府県の地にそれぞれ設置されています。)長が紛争当事者に対し、個別労働紛争の問題点を指摘し、解決の方向を示唆することにより、紛争当事者が自主的に民事上の個別労働紛争を解決することを促進する制度です。法違反の是正を図るために行われる行政指導(労基署による是正勧告など)とは性格が異なり、紛争当事者に対して話し合いによる解決を促すものであり、一定の措置の実施を強制する法的効果を有するものではありません。
この制度のメリットは,公の機関を通じた話し合いの機会を得ることができ,その中で早期柔軟な解決を図ることができることにあります。
デメリットは,裁判所で行う法的措置を異なり,労働局は,一定の紛争解決基準を示す権限責務がありません。従って,基本的には,交渉を公的な機関において行うという意味を超えて解決への強制力がないため,会社より大幅な譲歩を求められ,それを拒絶するとあっせんが打ち切られることが多いのが実情です。また,そもそもあっせんの場に会社が参加しないことも多々あります。 なお、この手続から、当然に労働審判制度に移行することはありません。

5 労働審判を利用する場合どうなりますか?

労働審判は,3回以内の期日で審理が終わりますので,申立から2,3ヶ月以内でスピーディな解決が期待できます。また,調停が成立しない場合の審判で,労働契約の終了と引換に金銭的な給付を命ずることができるとされています。
他方で,審判に対する異議が出された場合には,自動的に本訴に移行することとされています。詳しくは「労働審判とは?」をご確認下さい。

6 仮処分を利用する場合どうなりますか?

一般的には,労働契約上の権利を有する地位を仮に定める「地位保全仮処分」と賃金の仮払いを求める「賃金仮払い仮処分」の双方を同時に申し立てすることが通常です。
申し立て後,審尋(しんじん)期日という裁判をするための日取りが決められ,その期日に使用者側,労働者側の双方から主張・証拠(疎明)の提出がなされることになります。
この際,証拠(疎明)の資料としては,労働者側からは,解雇通知書,内容証明郵便,就業規則,業務記録,賃金明細書,録音テープ(反訳書)等の他,陳述書や聴取書など労働者等の供述を記録したものも提出されます。早ければ1,2ヶ月で,長ければ半年程度の期間で事件が終了します。
この結果,裁判所が賃金仮払いの決定を出した場合,使用者はその決定に従って賃金を支払わなければならなくなります。もっとも,仮処分は本訴の結果が確定するまでの暫定的な決定です。詳しくは,「仮処分とは?」をご確認下さい。

7 本訴(通常訴訟)を利用する場合どうなりますか?

一般的には,①地位確認の訴えと,②賃金請求の訴えを提起します。通常の民事訴訟同様に口頭弁論,証拠調べ手続,最終的には判決といった審理手続がなされます。あらゆる証拠が取り調べられ,証人尋問,本人尋問も行われます。判決に至るまでは早ければ半年,長ければ2年程度時間がかかることもあります。詳しくは,「訴訟とは?」をご確認下さい。

8 労働審判,仮処分,本訴いずれを選択すべきですか?

仮処分を申し立てた後,本訴で最終的な結論(第1審まで)が出るまで,一般的には,1年~2年位かかるといわれています。ですので,当事者間に深刻な対立が無く調停成立の見込がある場合などは,スピーディな解決が期待できる労働審判を利用することがよいといえます。
他方で,労働審判は,調停が成立せず,審判がなされた場合でも,当事者から異議が出されれば,本訴に自動的に移行します。それゆえ,当事者間に深刻な対立がある場合(例えば,労働者が復職を求め,使用者がそれに応ずる見込が無い場合など)には,労働審判だけでは解決ができず,結局本訴に移行することになってしまう可能性が高いといえます。このような場合は,最初からいきなり本訴を提起することも考えられます。もっとも,このような場合に労働審判を申し立て,地位確認の審判が認められれば,それが仮処分決定を得るための有力な疎明資料(証拠)となることもあります。また,労働審判を経た後の本訴の進行は,既に当事者から主張・証拠が出された後なので,比較的迅速に審理が進められるという実情もあります。従って,当事者間の対立が深刻である場合でも,労働審判を申し立てる実益は場合によってはあるといえます。
結局は,労働者の意向に最もあった手続を,具体的状況下で選択していくことになります。